カード紹介の20回目は、「20.審判」のカードです。
カードの解釈について
【一言】
進むべきものは進み、戻るべきものは戻ってくる。
その出来事はひとつの終着点となるでしょう。
<キーワード>
正位置:結末、決着、解放、再会、決心
逆位置:閉塞感、チャンスを逃す、過去に囚われる、延期、間が悪い
<大まかな解釈の例>
(正位置)
・あなたの会いたかった人、やり直したかった人と再会できるでしょう。その再会は良いものとなります。
・あなたの決断が決定的なものをもたらします。
・過去の傷が癒え次のステップに進めそうです。
(逆位置)
・これまでやってきたことを投げ出したくなるかもしれません。
・いままでやり残して後悔していることはないでしょうか?
・望みがなくなり、あきらめざるを得ないかも。
*コラムにもイメージを書いていますので、興味がある方はご覧ください。
解釈は一例ですので、カードを見て感じたことを一番大切にされてくださいね。
象徴ワンポイント:The Pictorial Key to the Tarotを参考に
*The Pictorial Key to the Tarotはアーサー・エドワード・ウェイトが作成した「ウェイト版タロット」のウェイト公式の解説書です。古典のようなものです。ですので、かなーりマニアックな解説になります。ご興味のある方はご覧ください。
*ウェイトはこのカードの名称を「最後の審判」としていますが、この解説ではよく使われている名称である審判としています。
①ラッパを吹いている天使
ラッパを吹いている天使は、熾天使ミカエルです*1。 また、ラッパについている十字は「St. George's cross:聖ゲオルギウスの十字」で、イングランドの国旗です。*2
聖ゲオルギウスは竜退治をして、竜に襲われていた村の人々を救ったそうですが、後にキリスト教を嫌うローマ皇帝(ディオクレティアヌス)の迫害に遭い、殉死しました。
聖ゲオルギウスが退治をした竜の血は「赤い薔薇」となったそうで、今でも聖ゲオルギウス日に、愛する人に美と教養、愛と知性のシンボルとして、1本の薔薇と1冊の本を贈る風習があるそうです。
「赤い薔薇」は、殉教、男性性などの意味を持ちますが、ウェイト版のタロットでは、錬金術の世界の「黄金の華」*3 の一部であるという意味もあるのではと思います。 「黄金の華」は赤の花弁と白の花弁を持つ薔薇*4で、錬金術における心の変容(精神的悟りよりもっと高次なことかもしれません)を意味します。
*1 ガブリエルという説もありますが、個人的にはミカエルという説を支持しています。
*2 ウェイトはイギリス人でした。
*3 リヒャルト・ヴィルヘルムとユングの著書の「黄金の華の秘密」に「黄金の華は光であり、天の光は道である。自然と生命がまだ一体となっているところに『胚胞』が存在する。錬金術の工程は、闇が光を生む時に始まるのである。」という記述があります。「黄金の華の秘密」は、中国道教の「太乙金華宗旨」をリヒャルト・ヴィルヘルムがドイツ語に完訳した書籍です。
*4 ウェイト版のタロットで「白い薔薇」の「生花」を持っているカードは、「愚者」のみです。
②復活している人々
何人もの人々が、海に浮かんだ棺の中から復活しています。
これは「新約聖書:黙示録」の「海はその中にいる死者を出し、死もハデスも、その中にいる死者を出した。そして人々はおのおの自分の行ないに応じてさばかれた。」という部分を元にしていると考えられます。
ウェイトが「すべての人物が一斉に、驚きと崇拝と歓喜の態度を表現している」と述べているように、ここにいる人々は神に「選ばれ救われた」人々です。
③このカードの人物たちの到達点と生命の木
この復活した人々はどこに向かうのでしょうか? これまでカバラの考え方にはあまり触れてきませんでしたが、今回は生命の木の図を示します。*カバラにあまり詳しくありませんので、不備がありましたら申し訳ありません。
ウェイトはこの人々が到達する場所についてこのように述べています。
「ここには、現在の場所より遠くによく運ぶことができない意味の暗示である。」
「ラッパやその他もろもろを鳴らす、我々の中なるものは、それに応じて我々の本質にある低いものの上昇である。それはほとんど一瞬であり、ほとんど瞬く間のことであろうか?」
変化を達成してはいるが、そこよりも遠くに行くことができない場所。おそらく生命の木の図の「審判」のパスの部分「マルクト→ホド」の位置だと思います(ホドは図の黄色の五角形を構成していますので、「エデンの園」には到達できているようです)。 一切の罪を犯さなければ、死んだあと神が瞬時に「ホド」まで案内してくれるということなのでしょう。
しかしながら、この場所は、これまでのカードの説明にあった「女教皇」が守る先、「至高世界」には遠く及ばない場所です。 ウェイトはこのように述べています。
「内なる目を有している者は、見て、それとともに発見することを許されるだろう」
「彼らは、本当に、それが過去に永遠の生命のカードと呼ばれたのを理解するだろう。そしてこういう訳で、それが『節制』という名の下にあって通るものと比較されるかもしれない。」
人間が「至高世界」に至るためには、中央にある「意識の拡大」を表す「均衡の柱」のパスを通る必要があります。
「均衡の柱」は、マルクト(物質世界)→「世界」のパス→「節制」のパス→「女教皇」のパス→アビス(神の真意)→ケテル(神の領域)で構成されています。
真の知識を得たものは自らが神の領域に到達できるようですが、女教皇がベールの先に隠している海(アビス)が非常に手ごわそうです。
コラム
タロットを根本的に理解するためにまずは古典から学ぼうと思い The Pictorial Key to the Tarot を読んできましたが、本当に奥が深いです。
今回少し触れた「黄金の華の秘密」という本は、中国の道教と瞑想に関係した本なのですが、科学を発展させてきた19世紀‐20世紀初頭くらいの西洋の人々が東洋の心理学にあこがれを持っていたということにうれしさを感じます。
この「審判」のカードはカバラの知識がなければ十分に読み取れないようでした。 改めて生命の木の図を書いてみたりして頭を整理したのですが、The Pictorial Key to the Tarotのすごさを改めて感じました。
私はこのカードを見たとき、辿り着いた場所、果たされる約束、決定的な出来事 というイメージが湧いてきます。
*The Pictorial Key to the Tarotの解釈はミステリーアートさんの"ライダーウェイト・タロット解説(http://mysteryart.web.fc2.com/library/tarot/rw/tarwtop.html)"を参考、引用しております。主に、聖書周りの部分を引用しております(引用の許可をいただいております)。ミステリーアートさんありがとうございました。
*ウェイト版の図案については大人の都合でバラバラになっています。
*カードの素敵なイラストはjohanさんの作品です。
*クメールは現存のいかなる宗教団体、また自己啓発団体とも関係ありません。オカルト解釈は趣味です。
*とりとめナイトよろしくお願いいたします♪
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